痙縮に対する介入として、「筋緊張調整」という形で、筋を緩めたり、痙縮筋をストレッチすることは少なくないかと思います。
なんとなく、痙縮が軽減したと感じることもあるかと思いますが、実際の効果はどうなのでしょうか?
痙縮に関しては、以前のコラム記事をご確認いただければと思います。
大事なことは、中枢性と末梢性いずれも原因として考えられていることです。
そもそもは痙縮は脳卒中などが原因となり、上位運動ニューロンの障害により生じるわけですが、二次的な不動や廃用による結合組織のスティフネスが筋紡錘に変化をもたらし、末梢の問題として痙縮を助長させているという可能性が示唆されています。
末梢性の問題が痙縮を引き起こしている一因として考えると、ストレッチは効果がありそうな気もしますよね。
では、どのように、どの程度ストレッチをすればよいのでしょうか?
上肢に対する方法について紹介していきます。
【どのようにストレッチを行うべきか】
まず前提として、痙縮に対するストレッチの研究報告では、デバイスを用いたものがほとんどです。
なので、徒手的なストレッチをどの程度実施すると痙縮が抑制されるかはわからない部分であります。
用いられるデバイスとしては、フィンブル(ストレッチボード)や装具などがあります。
ここでは、フィンブルを用いた時のストレッチプロトコル例を紹介します。
上記は参考文献②を参照しています。
写真のように、手の位置を3パターンに分けて、それぞれストレッチボードを用いてストレッチを行います。
1回4分を1日3セットなので、合計すると1日30分ほどはストレッチをする時間を作ることになります。
その他の論文でも1回10分・20分を2~3セットで実施する介入研究が多いので、痙縮を軽減させるためのストレッチは少し長めに実施する必要があるかもしれません。
【臨床視点で効果的と思われる方法】
ストレッチボードを用いた痙縮軽減の方法を紹介しましたが、手関節の屈曲が強い方に対しては、そもそも写真のようなポジションを取ることが困難なケースも多いかと思います。
実際、私も介入をしていてストレッチボードは導入が難しいケースもいらっしゃいます。
特に、慢性期で筋の短縮が顕著に進行しているケースなどは、無理に指伸展+手背屈ポジションを取らせることが痛みに繋がるリスクもあります。
このようなケースの、痙縮抑制として最近用いているのが重錘です。
このように、重りを指の上に乗せることで、重さにより自然と筋が引き伸ばされ、痙縮が軽減するケースがいらっしゃいます。
また、集団屈曲が可能な方には、あえてソフトメディシンボール(写真のボールは1㎏)などを背臥位で把持させることで、重力と重錘により手関節屈筋群が伸長され、結果的に(ボールを離した後も)手関節の痙縮が軽減するケースがいらっしゃいます。
対象者の方々は、「力を抜くこと」がとても難しいという表現を良くされると思います。
このような方には写真のような介入が効果的なケースが多いです。
重錘を用いると、重量感覚が入力され、自然と力を抜くことができることに繋がると推察しています。これは臨床上での工夫の部分ですので、すべてのケースに当てはまるわけではないですが、痛みに注意し、対象の方がいたら試して頂いても良いかと思い紹介させていただきました。
手の痙縮に対するストレッチに対して簡単に解説させていただきました。
実際の臨床では、10分20分ストレッチをすることは時間的に困難だと思いますので、こういったことをふまえて、自主トレとして提案することも重要だと思います。
参考にしてみてください。
【参考文献】
①Salazar AP, et al. Effectiveness of static stretching positioning on post-stroke
upper-limb spasticity and mobility: Systematic review with meta-analysis. Ann
Phys Rehabil Med. 2019 Jul;62(4):274-282.
②W.H. Jang, et al.The effect of a wrist-hand stretching device for spasticity in
chronic hemiparetic stroke patients. Eur J Phys Rehabil Med.2016 ,52, pp. 65-
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