脳卒中後の上肢麻痺に対して、課題指向訓練が重要なこと知られていますが、具体的なマニュアルがあるわけではないので、実際にどのような課題を対象者の方に設定し、実施すべきは悩ましい部分かと思います。
サロン会員の方からも、物品課題についての質問がいくつかありましたので、こちらの記事で課題について少し紹介させていただきたいと思います。
課題指向型訓練については、こちらの記事もご確認ください。
まず、前提として日常動作を遂行する上でreach-to-grasp(手を伸ばして物をつかむ動作)は、日常生活に不可欠な動作です。そのため上肢の麻痺を呈した方にとって、このreach-to-graspの機能が向上することが、生活動作の自立度拡大につながる可能性を持ちます。
課題指向訓練はまさに、このreach-to-graspの課題を個別に設定し段階づけを行いながら実施していくものになります。
課題指向訓練は以下にも示されているように、対象者の獲得したい動作を想定し、その獲得に向けて不足している動きを引き出せるよう課題を設定していきます。
◎課題指向訓練のコンポーネント
例えば、「髪を櫛でとかす」という目標があった場合、櫛を把持し続ける握力、櫛を操作する手関節の運動、頭部までリーチできる肩関節・肘関節の随意性など多様な機能が求められます。
仮に対象者の動作を分析し、「頭部までのリーチ機能が不足している」と評価した場合、
肩関節屈曲を促す部分的な練習
↓
肩関節屈曲+肘関節屈曲など複数関節を組み合わせた課題練習
↓
実動作練習(髪を櫛でとかす)
といった流れで、部分練習と全体練習を組み合わせていきます。
(実際には、こんな単純ではなく、もっと獲得すべき課題がある場合が多いかと思います)
この時、悩むのが「肩関節屈曲の部分的な運動ってどのような課題をすればよいのか?」ということだと思います。
ブロックを積み上げる、コーンを積み上げる、など皆様も様々な課題を日々実践されていると思いますが、これはマニュアルがないので、引き出しの多さが重要になるかと思っています。
こちらの論文にはreach-to-graspの課題が122ほど紹介されているので、参考にしてみると良いかもれません。
↓
Turton,J.et al. Home-based reach-to-grasp training for people after stroke: study protocol for a feasibility randomized controlled trial. Trials,2013:14(1), 1-11.
※補足資料のファイル2にエクササイズマニュアルがあります。
上記の中に載っている課題をいくつか紹介します。

こちらは、太さの異なる筒を2本用意し、外側の筒を上に滑らせることで肩関節屈曲の動きを促す課題です。

これは、定規を持ち、両側にコーンを置き、前腕の回内外運動で定規をコーンにあてる課題です。


これは、定規を前腕遠位の背側部、橈側部につけて、そこを目印に背屈や橈屈の運動を促す課題です。
他にも、すでに実践している課題やあまり実践したことのない課題もあるかと思いますので、参考にしていただき、引き出しを一つでも多く持つきっかけになればと思います。
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