前回は前鋸筋の解剖と作用について書きました。
前鋸筋のトレーニング方法としては、色々と言われていますが、リハビリ場面ではプッシュアップや壁に手を当てて押すなど、CKCのエクササイズを行う事が多いかと思います。
では、果たして普段行っている前鋸筋の促通方法、トレーニング指導は正しいのでしょうか?
一つ論文を紹介します。
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訳すと「プッシュアッププラスエクササイズ時における前鋸筋と上部僧帽筋の筋電図分析」です。
プッシュアッププラス(以下PuP)とは、腕立て伏せ(プッシュアップ)を行う時に、
肘を曲げて(床に近づき)
⇩
肘を伸ばす(床から離れる)
⇩
肩甲骨を外転させる(背中を天井に向かって突き出すような動き)
この一連の動きをプッシュアッププラスと言います。
リハビリでも、壁押しをするときに肩甲骨を外転させながら壁を押すように力を入れたりしますよね。
あのイメージです!
PuPというエクササイズは前鋸筋の強化の為に頻繁に処方されるが、本当に効果があるのかということを検証するために行われたシステマティックレビューの論文になります。
結果としては、PuPエクササイズは前鋸筋の活動性を高め、上部僧帽筋の活動性を下げる可能性が高いです。
そして、さらに
・手の位置を肩幅より広めにする
・肩の屈曲角度は110、120度
・同側下肢を伸展(浮かす)
これらの条件で前鋸筋の活動性が高まることが示唆されています。
通常、腕立て伏せは肩屈曲90度で肩幅くらいに手を開いて実施しますよね。
それを、手の幅を広げて肩の屈曲角度も挙げて実施した方が前鋸筋の活動性を高められるということになります。
また、PuPを行う床は安定した場所が望ましく、不安定な面でのエクササイズでは上部僧帽筋の活動性が高まると、この論文には書かれています。
肩の屈曲角度が110度、120度の方が活動性が高まるということは、前回の前鋸筋機能解剖を踏まえると、主に下束部が働くと捉えてよさそうです。
なので、前回の機能解剖とこの論文だけを見てみると、前鋸筋中束部、下束部の活動性を高めるためのエクササイズとしてPuPエクササイズは有効な可能性があると言えそうです。
ただし、上束部はPuPエクササイズで活動性が高まるかは不明なところですので注意が必要です。
【臨床への応用】
前鋸筋を働かせるためには、PuPエクササイズはとりあえず有効そうだと言えるかと思います。肩の屈曲外転角度を広げて実施することで、より活動性を高めることができそうなので、位置を変えながら実施すると良いかと思います。
脳卒中の方や肩疾患の方で通常のPuPのポジションが取れない場合も、立位で壁押しなど応用して実施できると良いかと考えます。
臨床で試してみましょう
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