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パーキンソン病に対する上肢機能への介入



以前の記事において、有酸素運動や課題指向訓練がリハビリテーションにおいて重要であること、外的なキューイングや内的キューイング(自発的に身体を大きく動かそうとするなど)が重要であることについて触れました。




しかし、具体的に上肢機能に対してどのような介入をすれば良いかというのは、なかなか明確になっていない部分でもあります。


今回は、少し古いですがMorrisさんの論文(Morris,2000)から上肢機能への介入のヒントについて共有したいと思います。


パーキンソン病の方は、上肢のリーチ動作、把持動作、および巧緻動作を遂行する際、異常筋緊張により、適切な筋出力が発揮されずに動作が拙劣になってしまいます。



その際、以下のような点を注意して介入を行うことが有効であると提案しています。



【上肢訓練時におけるポイント】

①動作の順序を実行する前に頭の中でリハーサルする


②動作の前や動作中に把持する対象物を見る。対象物を見ることでより正常な上肢の動作を 

 活性化する「視覚的な手がかり」として機能する可能性がある。


③動作を分割し、分割した動作を別々に練習する。


例)水の入ったポリスチレンのコップを手に取って飲む動作の場合

 次のような動作を1つずつ段階的に訓練する

・手を対象物まで運ぶ

・対象物(コップ)を掴めるように、コップよりも少し大きく手を開く

・手を閉じる(コップをつかむ)

・コップが歪まないように静かに力を加えてカップをつかむ

・過度の握力をかけずにカップを口まで持ちあげる

・コップを徐々に傾けて飲む

・テーブルにコップを戻す

・コップを離す


④動作を行う際、言語刺激を入れる

※特に、多くの方は行動終了時(上記例でいうところのコップを最後に離すとき)が難しい 

 ため、動作遂行時に「離してください」などの言語指示を加えることで聴覚刺激となる。


⑤周囲の刺激に気を取られたり、同時に二次的な作業を行ったりしないようにする



【ホームワーク例】

さらに、自宅でできる課題として以下のような例を挙げています。


●サイズや形が異なるボタンの取り付け

●書字課題(例:クロスワード、線の書いてある用紙への書字課題、署名、など)

●サイズ、形、重さが異なるカップ(例:陶器のカップ、コーヒーカップ、スチロールカッ 

 プ)に手を伸ばし、つかみ、飲む

●コップから別のコップに水を注ぐ

●中身が入った様々な瓶の開閉

●重さの異なる瓶や箱を持ち上げて高さの異なるパントリー棚に入れたり出したりする

●親指と人差し指で米粒をつまんでエッグカップに入れる

●親指と人差し指でストローをつまんで缶に入れる

●着替えの練習

「右腕、左腕、頭を出す」などの言葉の合図を取り入れながらセーターを着る

●家族や友人、職場の同僚の電話番号をかける(座ったまま)

●ナプキンを折る、手紙を封筒に入れるなど



上記はあくまで論文に示されている一例ではありますが、少し参考になりますよね。


重要な点としては、「その方特有の機能的な作業課題を取り入れることが最も効果的である」という点です。そのため、その方の生活背景などを踏まえて、対象とする物品の選定を行うことが有効かと考えられます。


また、トレーニングの生活への般化を高めるために、目標、対象物の大きさ、形、質感、重さ、移動速度、対象物との距離などを変え、各課題のバリエーションを多く練習することも重要であるとされています。


パーキンソン病は症状の変動が生じますので、設定した課題を随時見直し、その時の対象者の能力に合わせた課題設定を行うことも重要と考えられています。



【参考】

Morris, Meg E. Movement disorders in people with Parkinson disease: a model for physical therapy. Physical therapy.2000.80.6: 578-597.


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