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パーキンソン病について~評価、治療、制度まで~


前回は、パーキンソン病の疾患概要~診断の流れについて説明しました。






今回は、評価から治療、制度面にも少し触れていきたいと思います。


①パーキンソン病の運動症状と非運動症状

評価の前提になりますが、前回説明したMDSの中の診断基準にも含まれているように、パーキンソン病では近年運動症状のみならず非運動症状にも目を向ける重要性が高まっています。


上の図はパーキンソン病の非運動症状と運動症状の出現する年推移を表しています。

真ん中の「0」部分がパーキンソン病と診断された地点を表します。

前回の記事で挙げたように、パーキンソン病の診断には前提としてパーキンソニズムが存在することが条件となっていますので、診断時点では運動症状が出現しているということになります。

一方、非運動症状はいつから出現しているのかを見てみると、便秘などの症状は発症の20年前から生じ始め、その後RBD(レム睡眠行動障害)、うつなどが出現するとされています。

便秘が出始めただけで、パーキンソン病を疑うのは困難ですし、実際は診断が下らないとリハビリはできませんが、このような背景から、パーキンソン病は早期発見後に運動などを積極的に行い、進行を遅らせていくことが重要と考えられています。



②パーキンソン病の評価

パーキンソン病では重症度分類としてHoehn-Yahrの分類が使用されていますが、より詳細に評価する方法として、UPDRSというものがスタンダードになってきています。


こちらの評価は、パートⅠ~Ⅳに分かれており、非運動症状、運動症状、ADL、合併症に関して細かく評価することができます。


時間がかかる評価になりますので、どれか一つのpartを抜粋して定期的に評価している施設もあるのではないでしょうか。


神経内科の医師は、UPDRSを診察時に評価してカルテに結果を書いてくれる方もいます。


下記リンク先では、日本語版のオフィシャルな評価方法が説明付きで見ることができます。

ぜひ確認してみてください。



③パーキンソン病の治療~薬剤~

続いて治療に関して説明していきます。パーキンソン病では、薬物療法と運動療法が非常に重要と考えられています。


薬物治療に関しては、L-dopaが主となることが多いかと思います。


しかし、L-dopaにもデメリットはあります。

L-dopaの問題点として、運動合併症(ジスキネジア、ウェアリング・オフ)を起こしやすいと言われています。


そのため、若年発症の方の場合、病気と付き合っていく期間が長いことを考えると、早くからL-dopaの量を多く投与してしまうと合併症を起こしやすくなるリスクがあるため、ドパミンアゴニスト(レキップなど)を中心に治療を進めていくこともあります。


また、L-dopaを処方し、徐々にウェアリング・オフ症状などの出現頻度が増えた場合の対処として、L-dopaを複数回に分けて投与するケースや、MAOB阻害剤やCOMT阻害剤を併用し、L-dopaの効果を延長させてていくような対応をするケースもあります。


このあたりは、医師の判断かとは思いますが、概要を知っておき、自分のケースがどのような薬をどの程度内服しているかを把握しておくことは非常に重要かと思います。


また、薬に関しては言うまでもなく、怠薬せずにしっかりと処方分内服できているかが重要ですので、アドヒアランスはとても大事な要素となります。

③パーキンソン病の治療~リハビリテーション~

パーキンソン病のリハビリでは、様々な可能性が近年考えられてきていますが、特に運動療法に関しての重要性は高いことが分かってきています。



運動療法というのは、主に有酸素運動や課題指向運動になります。

これらの運動が、神経組織や脳自体に影響を与え、結果として対象者の行動(運動機能、認識能、気分、モチベーションなど)を変えると考えられています。



続いて、リハビリ場面におけるCueingについても考えてみたいと思います。

従来より、パーキンソン病には外的Cueが効果的であると考えられていました。具体的には療法士が手を叩き、そのリズムに合わせて足踏みをしてもらう聴覚刺激を使う方法や、床に線を引き、一歩を出しやすくする視覚刺激を使う方法などが挙げられます。

上の図の中心に基底核の運動ループに関して概観を示しています。

基底核の働きとして、視床や脳幹には常に抑制機能を働かせつつ、必要に応じて(運動を起こすタイミングで)抑制を解除(脱抑制)することで、運動が過剰に生じないよう、適切な運動が生じるようコントロールする働きがあると考えられています。


パーキンソン病は黒質変性で、上記のループがうまく働かず、運動の抑制が生じやすくなっている状況と考えられます。

そのため、外的Cueはこのループ外の機能(主に聴覚や視覚)を使い、代償戦略の一つとして運動を惹起させる方法であると考えることができます。



一方、外的Cueだけでなく、内的Cueの重要性も言われるようになっています。

つまり、対象者自身が意識的に身体を動かすということになります。


代表的なのが、LSVT bigなどになります。


大きく身体を動かすよう誘導し、意識付けを行うことで、運動機能が改善するケースは臨床でも出会います。

外的cueを行うと、逆に足の踏み出しが悪くなるケースも中にはいます。


これらのcueingは対象者に合わせてうまく使い分けることができると良いかと思います。


③パーキンソン病の制度


最後に制度についてです。ここでは、難病医療費助成制度について説明します。

パーキンソン病は難病医療費助成制度適応になりますが、一応条件があります。


ヤールの分類で3~5度かつ、生活機能障害度2~3度だと、無条件で制度対象になります。


一方、それよりも軽度症例の場合(ヤールの分類1~2度、生活機能障害度1度)、医療費総額が33,300円を超えるツキが年間3回以上あるという条件が満たされれば制度対象となります。


難病医療費制度とは、指定難病により治療費が高額になる方のために、自己負担の上限が設けられる(上限額まで自己負担すればよい)という制度になります。


他にも地域ごとに行政主体の支援制度があるかもしれませんので、一度自身の地域について調べてみると全体像把握に良いかと思います。



以上、パーキンソン病についての評価~制度面に関して簡単に説明しました。


また、別の機会でリハビリ部分のところなど深堀していきたいと思います。

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