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運動観察療法について

更新日:5月6日

今回は、運動観察療法について簡単に紹介していきたいと思います。


運動観察療法Action Observation Therapy:AOT)とは、『目的とする運動(動作)を観察する』というものになります。


観察するだけ?と思うかもしれませんが、背景にミラーニューロンシステムの存在があると考えられています。


ミラーニューロンシステムとは、行動を観察することで、実際に同じ行動を実行するときに活性化される脳の部位が、同じように活性化されるシステムです。


つまり、『注意深く観察するという行為』が、運動時と同じ脳の発火を促す期待が持てるということになります。


このミラーニューロンシステムを背景として、近年運動観察療法の効果に関する報告がみられ始めています。



では、実際にどのように運動観察療法を提供すればよいのか?



調べてみると、運動観察の方法に関しては、論文により様々です。



例えば、慢性期脳卒中患者を対象とした運動観察療法が上肢機能に効果があることを示したErtelt(2007)の研究では、以下のような方法で実施されています。


・6分間ビデオを観察⇒6分間観察した動作を実施。

・6分間のビデオの中に3つの動作課題を提示

・課題は全部で54課題(18日実施。1日3課題×18日=計54課題)

・課題内容は簡単なものから複雑な上肢課題(コップの使用、蛇口の開閉など)



これは1例ですが、論文によって、動画観察時間も課題数もバラバラですので、患者様に提供する際は、獲得したい動作をベースに難易度設定をして、動画を提示できると良いかと思います。



ビデオを観察した後に、実際に運動(模倣)をすることもセットになっていることが多いです。運動麻痺の対象者の場合、随意性がある程度保持されている方に対しては、運動観察+模倣が良いかもしれませんね。



また、運動観察では、1人称視点と3人称視点というキーワードが良く出てきます。

1人称視点は、いわゆる『自分が動作を行っているような状況で動画を撮影して観察する』ことです。


以下のような動画が1人称視点になります。




1人称と3人称どちらが良いかは、まだ言い切れないですが、多方向で観察するのが良いかもしれません。


【患者様が動かしている動画を作成してみる】

動画提示の際、モデルは患者自身でなければならないという決まりはないですが、より「自分で動かしている」という錯覚を得るための方法を紹介します。


・非麻痺側で目的の運動を実施してもらい、動画を撮影

・動画を反転

・麻痺側で動かしている動画が出来るため、それを使いAOTを実施する


実際に臨床では実施してみると、ご自身の身体を使って動画を作成した方が、効果的な印象を受けます。


AOTの良い点は、簡易的で自主トレとしても提案しやすい点です。


ぜひ、参考にしてみてください。



【参考文献】

Sarasso, Elisabetta, et al. Action observation training to improve motor function recovery: a systematic review. Archives of physiotherapy 5 (14): 1-12.2015


Ertelt, Denis, et al. Action observation has a positive impact on rehabilitation of motor deficits after stroke. Neuroimage 36 (Supple2): T164-T173.2007





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