ストレッチはほとんどの人が一度は患者さんに提供したことがある技術かと思います。
では、実際にストレッチにはどのような効果があるのか。
ストレッチに関しては、今や情報サイトなどで調べると様々な効果があると謳われています。
・柔軟性の向上
・可動域向上
・筋緊張軽減
・循環機能の改善
・交感神経の抑制
などなど。
特に、我々リハビリでは柔軟性や拘縮予防、脳卒中の痙縮などを期待して実施することが多いかと思います。
しかし、ストレッチについては、その効果について今でも様々な議論があります。
例えば、私たちが学生の頃、柔軟性の向上やケガ予防目的で運動前に行われていた静的ストレッチは、現在はその効果について疑問視されています。
逆に運動パフォーマンスを低下させるという報告もあり、静的ストレッチは実施するべきではないという主張をする人は多くなりました。
また、脳卒中の場合、ストレッチにより痙縮の抑制が期待できる可能性を示唆する報告はありますが、それは器具を用いて20分~40分程持続的に伸張するストレッチになるので、徒手で行う一般的なストレッチでの効果は明らかではありません。
以上のことから、リハビリの現場においても、ストレッチに対して効果がないからと、介入で行うことに対して否定的に捉える上司などもいるかと思います。
では、ストレッチは意味がないのか。
「目的によっては意味がある」というのが個人的な考えです。
例えば、ストレッチは血管のスティフネスを改善し動脈硬化を防ぐ可能性があると言われています。
新野ら(2017)によると、静的ストレッチを3か月間毎日実施すると柔軟性、血管内皮機能(指標:RH-PAT index)が改善し、6か月間実施すると動脈硬化(指標:baPWV)に改善が見られ、なおかつ、6か月間ストレッチを行わないと、数値は元に戻った。すなわち可逆性があるという報告をしています。
ちなみに、この研究の対象者は40歳以上、閉経前女性のみとなっていますので、その辺りは踏まえて解釈する必要があるかと思います。
また、この報告の中で行われたストレッチの概要としては、
●ターゲット筋
僧帽筋、上腕二頭筋、三角筋、上腕三頭筋、上背筋(僧帽筋、菱形筋)、大胸筋、広背筋、腓腹筋、ヒラメ筋、股関節外転筋、股関節内転筋、大腿四頭筋、ハムストリングス、大殿筋、下部脊柱起立筋の15部位
●肢位
立った状態、座った状態、横になった状態で静的ストレッチを実施
●ストレッチの時間と程度
1部位につき20~30秒。ボルグスケールで「ややきつい」から「きつい」の間の負荷で実施
●頻度
1日1回以上,毎日15分間
この辺りの設定は参考になりそうですね。
ストレッチと血管との関係に関しては色々と報告があり、ストレッチによりNO(一酸化窒素)が発生し血管内皮に作用することで、動脈硬化予防につながるというのが、今のところ有力視されています。
まとめると、どうやらストレッチは予防的観点から捉えると実施する意義はありそうだ、ということが言えそうです。
なので、これから先も元気でいる、再発予防するなどの目的で、自主トレとして患者さんに指導するのは良いことかと思います。
一方、リハビリの介入時にストレッチを行う事に関しては、柔軟性を高めたいのであれば毎日、しかも20秒~30秒を実施しなければなりませんので、介入できる頻度や優先度などを加味して施術内容に取り入れる必要があるかもしれません。
患者さんはストレッチをしてもらうことが好きな方も多くいらっしゃるので、言われるがままにストレッチをする、という選択にはならないよう気を付けたいですね!
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