脳卒中後の痙縮に対しては、いまだに対応方法について苦難する課題です。
エビデンス的にはスプリントの使用なども検討すると良いとされていますが、下肢と違い安静時に静的装具を常に使用することは、装着による不快感も大きく、臨床的にも長期使用には難しい印象を受けます。
そこで、最近はキネシオテープを使用する機会が多いです。手関節の掌屈が強い方に対しては、やや効果が薄い印象を受けますが、それでも対象者からの反応は良いケースが多いので、共有したいと思います。
【痙縮に対するキネシオテープの効果】
脳卒中後の上肢麻痺に対するキネシオテープの効果に関する論文は調べるといくつか出てきます。
●麻痺手にキネシオテープを実施した群と,対照群のランダム比較試験において、キネシオ
テープ群で5週後、対称群よりも有意なFugl-Meyer Assessmentの遠位部における機
能改善を認めた(Huang,2019)
※介入期間:3週間
※両群、手指機能のためのストレッチ運動と反復課題トレーニングを、1回20分、1日2回、
実施。期間中、作業療法や理学療法を含む通常のリハビリテーションプログラムを受けた
●脳卒中患者のボツリヌス毒素注射後において、手関節、手指の痙縮はストレッチやスプリ
ントに比べて粘着テープ使用において、優位に軽減が見られた(Santamato,2014)
※こちらはAdhesive tapingを使用したとなっているため、キネシオテープとは少し種類が
異なるテープを使用したものになります。
【どのようにテープを貼るか】
では、どのように貼れば良いでしょうか。
先に紹介したHuangさんの論文に記載してある方法を参考にしてみます。
上図のように、貼付範囲は前腕近位1/3から開始し、手首背側を経由し、その後5指の遠位指節間関節まで5本に分割して貼付します。
貼るときのポイント
貼り方は色々あると思いますが、こちらの動画の貼り方が参考になりますので載せておきます。
↓
①前腕は回内位で、なるべく手関節背屈、指伸展を他動的に保ちます。
②その状態で、指側と前腕側の一部のみ先に貼り付けます
③その状態で、残り裏紙を取ります
④背屈位から掌屈位へ誘導しながら、貼り付けていきます
痙縮が強い方の場合、うまく貼ることが難しいケースもありますが、参考にしてみて試してもらえればと思います。
臨床的には、伸展方向へ皮膚が引っ張られることで、感覚入力としても多少なりとも効果がありそうな印象はあります。
実際、対象者から、テーピングを貼ることで「指が伸びやすい感覚がある」と言われることがあります。
前腕部分の長さをもう少し遠位からにし、電気パッドを筋腹に貼り、電気刺激と併用して手の訓練を進めることもあります。
また、ある程度の随意性がある場合は、スパイダースプリントなどを併用することも良いかと思います。
皮膚がかぶれやすくなる、痒くなる方も一定数いらっしゃるので、その点には注意が必要かと思います。
≪参考≫
1.Huang YC, et al. Effects of kinesio taping on hemiplegic hand in patients with
upper limb post-stroke spasticity: a randomized controlled pilot study. Eur J
Phys Rehabil Med 2019; 55(5): 551-557
2.Santamato, Andrea, et al. Adhesive taping vs. daily manual muscle stretching
and splinting after botulinum toxin type A injection for wrist and fingers spastic
overactivity in stroke patients: a randomized controlled trial. Clinical
rehabilitation 2015; 29.1: 50-58.
Comments