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訪問看護人員基準問題について考えてみる~前編~



ここ最近業界内ではホットな話題になっている訪問看護人員基準問題について、少し整理してみたいと思います



まず、知らない人もいると思いますので、今回の問題を簡単に説明しますね。


令和3年度の介護報酬改定に向けて、厚生労働省では社会保障審議会・介護分科会というものが行われております。

そこで、訪問看護ステーションの人員配置基準に「サービスの提供にあたる従業員のうち看護職員が占める割合を6割以上とする」要件を設ける提案がなされた事が発端です。


この提案に対し、PT・OT・ST協会が待ったをかけて、反対署名を現在集めているというのが現状です。


では、これは何が問題なのか。


PT・OT・STの三協会が訴えていることは大きな点は二つです。

・約5000人の訪問看護ステーション勤務の療法士が雇用を失う

・その結果、約8万人の人がリハビリを受けられなくなる



例えば、Aという訪問看護ステーションの現在の人員が看護師5名、療法士5名とします。この場合、看護師が6割に満たしていないので看護師を雇用するか、療法士を解雇するしかないわけです。


この結果、サービスを受けられなくなる人も増えるという意見なわけですね。



これだけ見ると、確かに大変ですよね。とても他人事ではありません。



そもそもなぜ、今回の様に規制がかかろうとしているのでしょうか。


訪問看護ステーションというのは、あくまで看護なので、訪問看護ステーションから行われるリハビリ(いわゆる訪看護Ⅰ5)は看護業務の一環であり看護職員の代わりに訪問させるという位置づけ。になります。


しかし、訪問看護ステーションは療法士でも看護師の雇用をすれば(現状、常勤換算法で2.5名の看護師が必要)起業できるわけです。


その結果、近年訪問看護ステーションの設立は急増し、また訪問看護領域で働く療法士も増えていきました。



よく混同されますが、訪問看護からのリハビリテーションと訪問リハビリテーションは、別です。


訪問リハビリテーションは、医療機関や老健などから提供されるものです。


下の図を見て下さい。










これは、単純に事業者数と受給者数を表したグラフですが、訪問リハビリテーション事業所に比べ、訪問看護事業所が多く、受給者数も約5倍であることがわかります。


それほど、在宅ニーズが高まっているとも言えるかもしれませんが、医療機関ではなく株式会社として設立できる、参入しやすいというのも背景にあるかと思います。


冒頭で説明した通り、今回看護師の人員配置割合で話題になっていますが、元々訪問看護に関することについては議論されてきていました。


過去の診療報酬改定でもリハビリ関する項目が減算されている実情があります。



例えば、

※H30年介護報酬改定(訪問看護において)

・予防(要支援)は基本報酬が20分302単位→286単位


※令和2年介護報酬改定

・(訪問看護基本療養費Ⅰ)以前は看護師・理学療法士等が週4日以上訪問すると、週4日目以降から報酬が1,000円高くなっていたが、今後は看護師のみが対象となった(療法士が何回訪問しても報酬は増加しない)


・機能強化型訪問看護ステーションの人員配置要件において、理学療法士等のセラピストの割合が高いと機能強化型から除外される


参考資料




これら過去の改定から


●訪問看護はより重症度の高い人を対象にしましょう

●あくまで看護を中心としましょう


というメッセージが含まれていることがわかります。



この様な流れがあって、今回の問題なので、ついに来たか・・という感想が率直なところですね。


国の方針としては、おそらく

●軽度者や予防目的のサービスは地域支援事業へ

●リハビリテーションの提供は訪問リハビリテーションへ


こういう方針なのかと考えられます。



ただ、訪問リハビリテーション施設は医療機関ベースですし、訪問看護事業所の代わりとなるくらい事業所を増やすことは簡単ではありません。


また、現在の介護保険制度は日常生活レベルや認知機能などを加味して介護度が決まりますが、要支援になっても質の高いリハビリを求める人は一定数存在します。


その様な方をフォローする体制も十分ではないと言えますよね。


なので、今回の三協会の声明文は職域を守るという意味で重要かと私は考えます。


しかし、政治力の弱さやリハビリの必要性を訴え切れていないために、今回の様な事を招いているという意見もあります。



そういう気持ちはもわかります。。



こういった部分を後編では書いていきたいと思います。


色々と考えさせられる件ですね。。





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