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執筆者の写真リハビリスクエア【リハスク】

モーターコントロールエクササイズとは


「体幹を鍛える」という言葉はかなり一般化され始めていますが、実際のところ臨床場面においても体幹に対してアプローチする場面は多いかと思います。



でも実際どのように実施すればよいのか、迷う場面も多いのではないでしょうか。



今回は、その疑問に対してモーターコントロールエクササイズという視点から記事を書いていきます。



まずモーターコントロールエクササイズ(Motor Control Exercise :MCE) について簡単に説明します。


【MCEとは】

MCEは非特異的腰痛に対してのアプローチとしてもともと開発された背景があります。


非特異的腰痛患者は、脊椎の協調と安定性の維持に関与する深層筋(腹横筋、多裂筋、骨盤底筋など)の制御に障害がある可能性があることが示されていました(Hodges 1998)


腹横筋などの深層筋の働きが低下し、動作時に筋収縮の遅延が生じ、筋の厚さも減少するなどということが報告されていました。


そのような原理に基づいて、MCEは、深部体幹筋の活動を促し、体幹の制御機能、および能力を回復することを目的として開発されています。



おそらく、臨床場面でも腹式呼吸やコアトレーニングと呼ばれる運動を提供しているかと思いますが、それらは、MCEに含まれます。



【MCEの目的と手順】

では、MCEをどのような手順で実施すればよいのでしょうか。


以下は2009年のcostaらの論文をもとに説明します。


まずMCEには以下の目的があります。


①脊柱の深層筋、特に腹横筋、多裂筋、骨盤底筋の運動神経を再教育する

②より表層にある体幹筋のコントロールを回復させる

③痛みを軽減する姿勢や動作パターンを促す

④深部筋の早期かつ強直的な活動を促進する

⑤静的・動的課題における深層筋と表層筋の協調性を訓練する

⑥呼吸と排泄の調整と体幹の制御を訓練する

⑦機能を高めるためのトレーニング




そして、大きく二つのステージがあると言われています。


≪運動プログラムのステージ1≫

ステージ1では、主に深層筋(腹横筋、多裂筋、骨盤底筋)の活性化の段階です。


まずはそれぞれの筋が正常に働くかを評価します。


〇腹横筋の評価

(検者)

ASISの下方内側に指を置く

(被検者)

ゆったりとした呼吸で、息を吐きながら、ゆっくりと下腹部を引き寄せる。

収縮と呼吸を止め、ゆっくりと力を抜く

(評価)

表層筋の活動が少なく、指の下に緩やかな張力を感じる


〇多裂筋の評価

(検者)

多裂筋外側部に指を置く

(被検者)

骨盤を実際は傾けないが、傾けようとしてもらう

(評価)

過剰な起立筋(表在筋)による活動がなく、指の下に緩やかな収縮を感じる


〇骨盤底筋の評価

(検者)

触診は自身で会陰部の下を触れてもらう(女性同士なら同意のもと実施)。

(被検者)

尿を止めるように力を入れる

ゆっくりと骨盤を床から浮かす

(評価)

触れている部分に収縮があるかを感じてもらう



上記は一例になりますが論文では、これらの方法で評価することが記載されています。

MCEの論文では、触診だけでは、曖昧な主観評価になってしまうため、超音波などを使い、実際に目的とする筋が働いているかを評価/フィードバックするよう書かれていますが、現場ではなかなか難しいと思いますので、まずは上記内容だけでも参考になればと思います。



上記方法はそのまま介入にもつながります。

活動性が低下していれば、フィードバックを適切に行いながら、筋が働くよう意識してもらい反復練習していきます。


ポイントとしては、これら三つの筋はどれか一つが働くことで、他の筋も活性化する可能性が高いと考えられていますので、介入しやすい筋からアプローチしていくと良いかと思います。



これが第1ステージになります。



≪運動プログラムのステージ2≫


運動プログラムのステージ2では、静的・動的課題の中で表層筋と深層筋が協調的に機能する段階です。



〇静的エクササイズ例

・Bent knee fall Out :運動方法はこちらを確認ください 


・バランスボール上での座位保持など


・四つ這いでの呼吸訓練など



〇動的エクササイズ

・不安定な環境での運動(バランスボードでの姿勢保持など)


・速度、負荷量など段階付けした状態での歩行訓練、その他課題指向訓練





上記のような流れとなっております。


大事なこととしては、まず第1ステージで各筋を意識的に収縮できるのかという点にあるようですね。



MCEの非特異的腰痛に対する効果に関する論文は調べてみると、色々と出てはいますが、一般的な運動やストレッチなどと比較し、実際のところエビデンスが高く推奨度が高い介入ではありません。


腰痛の痛みに対する定義も拡大してきていますので、アプローチ方法も拡がってきています。

現場では、MCEが適応と判断した場合には患者の同意のもと実施するというのが、望ましいという位置づけかと思いますが、体幹運動を実施するケースは多いと思いますので、これらの流れやポイントを参考にしてみてもらえればと思います。



参考


Saragiotto, B. T., Maher, C. G., Yamato, T. P., Costa, L. O., Menezes Costa, L. C., Ostelo, R. W., ... & Cochrane Back and Neck Group. (1996). Motor control exercise for chronic non‐specific low‐back pain. Cochrane Database of Systematic Reviews, 2016(11).


Costa, L. O., Maher, C. G., Latimer, J., Hodges, P. W., Herbert, R. D., Refshauge, K. M., ... & Jennings, M. D. (2009). Motor control exercise for chronic low back pain: a randomized placebo-controlled trial. Physical therapy, 89(12), 1275-1286.








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