片麻痺の方の下衣操作についてサロン会員の方から質問がありましたので、今回は下衣操作について考えていきたいと思います。
下衣操作は単に「衣服の着脱」という意味に留まらず、トイレ動作に大きく関与してきます。
トイレ動作の自立は自宅退院を目指すにあたり必要不可欠な課題ですから、下衣操作の獲得はやはり重要と言えます。
では、下衣操作を獲得するためにはどのような要素が必要になってくるでしょうか?
ここでは、片麻痺の方のトイレ動作時の下衣操作(ズボンを膝周辺まで下ろし、履くまでの操作)について考えていきます。
まず片麻痺患者のトイレ動作の自立度に影響を与える要素として、 ・麻痺側下肢機能(重症度) ・非麻痺側筋力 ・バランス機能
などがよく挙げられます。
ただ、感覚障害や認知機能などは除外して検証している事が多いので、実際の臨床的には、感覚障害の程度や高次脳機能の有無、失調症状の有無、非麻痺側上肢の自由度(拙劣さ、不器用さ)なども関与してくると思われます。
これらの要素をふまえて、トイレ動作を見たときに、どの要素が問題になっているかをまず評価する必要があります。
例えば感覚障害が重度で麻痺側下肢で全く体重がコントロールできない事が主問題だとすると、感覚入力などの訓練も必要かもしれませんが、適切な環境設定をして、動作効率を高めた方が望ましいかもしれません。
続いてトイレ動作に強く影響を与える立位バランスについて考えていきます。
バランス機能の要素としては、主に
・筋骨格系(関節可動域、筋力)
・感覚系
・中枢処理系(フィードバック、フィードフォワード機能。姿勢戦略、ストラテジー)
が挙げられます。
なので、まずは発症部位や観察される所見、定量的なバランス評価などを行い、どの系の問題か整理する必要があります。
さらに、感覚系は①前庭感覚②視覚③体性感覚が重要になってきます。
これは個人的な臨床経験によるものもありますが、脳卒中の方は感覚障害を生じると感覚の重み付けとして視覚優位になる傾向があります。
しかし、トイレ動作で行われる下衣操作は立位保持をしながら、非麻痺側上肢で衣服を操作する事が求められる活動になります。
この事を考えると、トイレ動作での下衣操作においては視覚よりも前庭感覚、体性感覚が感覚系として特に重要ではないかと考えられます。
逆に移乗動作などでは視覚の重要度は増しますよね。
以上から考えると、感覚機能に対しての介入アイデアとしては、視覚情報を減らすため閉眼でのバランス訓練をまずは座位、立位と段階的に実施していく事などが考えられます。
次に、下衣操作を行うために必要な動作として、下方へのリーチ動作があります。 下方リーチ動作ら従重力活動で、骨盤前傾と股関節屈曲の動きが必要になります。 この時、大臀筋下部繊維、ハムストリングは遠心性収縮をしながら従重力方向への活動を制御する必要があります。 なので、まずはこれらの筋肉の働きを高めてコントロールできる事は重要になるかと思います。
これまで書いてきたようにトイレ動作の獲得には様々な要素があります。
なので評価をした上で必要な要素ごとに介入をしていく事は大事だと思います。
また、段階づけとしては、起立⇄着座から獲得を目指していく事がトイレ動作自立に繋がると考えられます。
特に起立動作では、離臀から伸展相にいくところで、下方リーチ時と同様に大臀筋下部とハムストリングの活動が高まると言われていますので、立位での下衣操作に繋がる可能性があります。
OTは特に関わる事が多い問題かと思います。
引き続きより良いアプローチを考えていきましょう!
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