今日は、これまで長く介入してきた上肢麻痺の患者さんが、物品把持の際にこれまでにない位自律的な指の伸展が見られ、うれしい気持ちになりました。
ということで、今日はプレシェーピングについてです。
プレシェーピングとは、いわゆる「物品を把持する前に生じる手の構え」のことですね。
普段私たちは様々な物に触れますが、必ず無意識に手の構えが生じています。
丸い物、四角い物、大きい物、小さい物、それぞれに物品に適応した構えが生じて物品把持が出来ているという事になりますね。
しかし、脳卒中などで上肢麻痺が生じると、常に手は屈曲位で物に合わせた手の構えが生じにくくなります。
上肢麻痺への介入においては、アクティビティに繋げる為にとても重要な要素だと思っています。
では、プレシェーピングとはどこで制御されているものなのか。
重要なのは視覚になります。
目で見て、その物品がどこにあって、何であるのかを認知することでプレシェーピングが形成されると考えられています。
ここで視覚経路について触れておきます。
目から入力された情報は大きく2つの経路で脳内で統合されると言われています。
脳の側頭葉は物体の形状把握(物体知覚)が関与しており、頭頂葉では物体位置(空間知覚)に関与していると言われています。
一つ目が腹側経路でWHAT系と言われるものです。この経路は物体の形状把握(物体知覚)の処理を行い、側頭葉に向かいます
腹側経路によって、例えば鉛筆をみれば「書くもの」と物体の意味を理解することに繋がります。
2つ目が背側経路でWhere系と言われます。
この経路は、物体位置(空間知覚)に関与しており頭頂葉に向かいます。
背側経路では到達運動や把握運動において、特に重要です。なぜなら、物体位置を確認することで、対象方向と距離を把握し、肩や肘の関節をどう動かすか、手をどういう形状にあわせて持つかなどの運動が調節されるからです。
こう考えると、まずは視覚機能が保持されているかの評価が必要と言えます。視力低下などでも物品把持のパフォーマンスは低下する可能性があります。
そして、プレシェーピングは麻痺を生じさせる外側皮質脊髄路の損傷でも機能低下しますが、頭頂葉損傷で機能が低下すると言われています(Jeannerod,1986)
つまり、プレシェーピングは、運動神経だけの問題ではなく、対象物を視覚で捉え、背側経路で対象物の位置関係が処理される過程ですでに生じる、フィードフォワード制御システムであるということが言えます。
もっと簡単に言えば、リーチを開始した時点である程度対象物に応じた手の構えが形成されている必要があるということになります。
<臨床への応用>
ここからは個人的な考えになりますが、これらの知見を踏まえて、プレシェーピング機能を高めるにはどうすればよいかを考えてみます。
例えば、様々な形状の物品を眼前に置き、非麻痺側でリーチ⇒把持まで行い物品に応じた手の動きを意識してもらう。
あるいは、麻痺側を徒手的にハンドリングしながら物品に応じた手の構えを経験させる。
どちらもイメージ機能を高める、いわゆる運動機能への直接的介入ではなく運動先行型の訓練という位置づけになるかと思います。
電気刺激などを用いてアシストできるとより効果的かと考えます。
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