前回は身体図式について書きました。
今日はメンタルローテーション課題と運動イメージについてです。
メンタルローテーション(心的回転)とは、頭の中で思い浮かべた心的イメージを回転変換させる認知能力の事です。
図形や文字を逆さまから見ても、私たちはそれが何であるか、何と書かれているか理解できます。
これは、頭の中で見たものを無意識に回転させる事が出来るので理解できているわけです。
メンタルローテーションは、元々空間認知能力に関わると言われていますが、近年は運動イメージとの関わりが注目されています。
運動イメージには二種類あり、一つは自分自身が運動を行なっている事をイメージする筋感覚イメージ。
二つ目は誰かが運動している様子を視覚的にイメージする視覚的イメージです。
この筋感覚イメージをする事で、実際に運動する時と同様に一次運動野、運動前野、補足運動野などが活性化する事が明らかになっています。
そのため、脳卒中後のリハビリでは、麻痺の回復戦略の一つとして、運動先行型の活動を提供する重要性が言われており、運動イメージはまさに、この運動先行型活動に含まれます。
しかし、なかなか正確に自分自身が運動を行うイメージをする事は難しいですよね。
そこで、注目されているのがメンタルローテーションです。
なぜなら、身体部位に関わるメンタルローテーション課題を行うと、運動イメージと同様の
脳部位に活動が生じる事が明らかにされてきているからです。
例えば、臨床場面では写真に示したような、両手の様々な向きの写真を患者さんに提示し、提示された手が左手なのか右手なのかを答えてもらう課題を行います。
麻痺による学習性不使用や慢性疼痛などにより一次体性感覚野が負の可塑性変化を起こした人は、メンタルローテーション課題の反応遅延が見られることも報告されています。
これは、先週取り上げた身体図式が、感覚入力の低下により変化してしまったため、生じると考えられています。
つまり、身体図式とメンタルローテーションとの関連も深いという事が言えますね。
このメンタルローテーション課題は簡易で導入しやすいので、運動イメージ訓練の時にだけでなく、身体図式能力を把握する一つの評価として実施してみても良いかもしれませんね。
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