小脳疾患では、しばしば認知・情動障害が生じます。
これは、 Cerebellar Cognitive Affective Syndromeと言われ、頭文字を取って、CCASとよく表現されています。
CCASはの主な症状として、提唱者のSchmahmann(1998)らは以下の4つを挙げています。
①遂行機能障害
計画、抽象的推論、ワーキングメモリー、言語流暢性の低下などの欠損
➁空間認知障害
視空間的記憶の障害、模写障害、図形の概念化の乱れ
③情動障害、人格変化
情動の平板化または鈍化。抑制の効かないまたは不適切な行動を特徴とする人格変化。
④言語障害
発声障害、文法障害など
上記4つの障害を特徴とし、非特異的な錯乱状態や認知症の概念とは異なるとされています。
小脳でこのような前頭葉症状に似た症状が生じる原因としては、大脳や視床と小脳をつなぐ神経線維の損傷によるものと考えられています。
小脳疾患の行動・情動障害の中には、前頭葉-皮質下損傷で見られるような、注意障害、うつ病、強迫性障害なども生じることが報告されており、Schmahmannは主要な5つの症状要素について挙げており、それぞれには陽性症状と陰性症状があることを報告しています。
この陽性症状と陰性症状についてですが、例えば小脳の運動障害では測定障害というものが生じることが多いです。このとき、目的の場所へ指を伸ばした際、目的場所を通り過ぎてしまう(運動過大:オーバーシュート)ことがあれば、目的の場所より小さくリーチすることもあります(運動過小:アンダー―シュート)。行動・情動症状に関しても陽性症状をオーバーシュートした状態、陰性症状をアンダーシュートした状態と捉えると分かりやすいかもしれません。
いずれにせよ、小脳では、これらの行動・認知・情動症状が出るだけでなく、症状が過大だったり、過小だったりすることもあるということを頭に入れておくと、整理しやすいかと思います。
※参考文献2をもとに作成
CCASは小脳疾患の方で比較的目にすることが多いです。失調症状や眼球運動障害に目が行きがちですが、高次脳機能評価も実施し、包括的な評価が行えると良いですね。
【参考文献】
1.Schmahmann JD, Sherman JC. The cerebellar cognitive affective syndrome. Brain. 1998; 121:561–79.
2.Schmahmann JD, Weilburg JB, Sherman JC. The neuropsychiatry of the cerebellum—insights from the clinic. Cerebellum. 2007; 6:254–67.
Commenti