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高齢者のふらつきに対する効果的な臨床アプローチ



この記事は、臨床上でよく見かける高齢者のふらつきに対して、どのように神経生理学の知識を用いて運動療法まで持っていくかという一例と応用につながるヒントとなる記事です。



回復期病棟や外来リハ、整体系で臨床に従事している方は特にこの”ふらつき”に対して、患者さんご本人やご家族から不安感を訴えられたことがあるはずです。



・ふらつきに対してどのように考えたらいいかわからない。

・どんな運動療法を提供したらいいのかわからない。

・なんとなく、神経系のアプローチをした方がいいとは思っているけど、どう臨床につなげたらいいのかわからない。

・ふらつきに対する運動療法の手数を増やしたい。

・いい加減、FBSやTUGだけの臨床評価から抜け出したい。ぶっちゃけこれだけじゃ足りないってわかってきた。



上記に当てはまる方は特にご覧いただきたい記事です。もちろん、初心者の方、特に新人でまだまだ臨床に慣れることに精一杯だったり、久しぶりに臨床にでた主婦の方、施設系のリハビリばっかりだったから動ける人のリハビリが久しぶりで感覚を取り戻したい人なんかもぜひご覧ください。




それでは、早速本題に参りましょう。



・姿勢制御、眼球運動の中枢は脳幹にある



倒れないように姿勢を制御する。


私たちは、当たり前のように二足で立ち、歩いたり走ったりして移動して、重いものを持ち運ぶことができます。重力のある地上で、転ばないようにこれらの作業をするためには、身体の動きに対して頭部や四肢の位置を確実に調節して、身体の重心を安定させる必要があります。


この姿勢制御は、脳幹や脊髄などに中枢のあるさまざまな姿勢反射の組み合わせによって生じています。姿勢制御のための反射を引き起こす入力機構として、前庭器からの頭部の動きの情報、筋や関節の動きの情報、関節や筋の固有受容器からの情報、眼球からの視覚情報などがあります。



特にこの五感の一つ、眼球からの視覚情報はかなり強い情報の一つです。何せ、反射名にも入るくらいなので。


反射名を改めて...


正直にいうと、臨床に出ているセラピストになってからしばらく姿勢反射に関しては離れてました。何せ外来リハが多かったので、なかなかそういうことに目を向けてこなかったんですよね。


ところが、たまたま高齢者の身体機能を上げるためには?という疑問を解消しようと勉強していたらこの姿勢反射に目が止まったわけです。



そしたら、僕が普段から臨床でなんとなくやっていることの言語化ができましたし、意味をちゃんと持たせることができました。同時に、どのように応用したらいいのかもイメージすることができました。


今回の記事内では、2つの姿勢反射とそれらをどのように臨床上で活用するのかという点をお伝えします!



そのほかのそれぞれの反射名と内容に関しては、特典としてお伝えしますね!その特典の内容はまた後ほど。




前庭頸反射


頭部が地面に対して傾いた時、頭部を垂直に保とうとする反射。つまづいて目に倒れそうになった時、頭部を後屈させて垂直を保とうとするのがそれ。


頭部の回転運動は、前庭半器官によって検出されます。その情報は、前庭神経核に送られてさらに、前庭脊髄路を開始して頸部筋群の運動ニューロンを恐怖あるいは抑制することにより、頭部を反対方向に回転させることができます。



前庭動眼反射


頭部が動いた時、、意識しない時でも休みなく動いている。その目的は、よく見るために、視野がぶれないようにするために安定させて、対象物をしっかりと網膜の中心部で捉えることです。そのために、頭部が動いたり、あるいは対象物が動いたりしても、視線を対象物へ向ける仕組みがあるわけです。


その中の一つの反射がこの前庭動眼反射というわけ。


この反射は、

頭部が動いた時、それを打ち消す方向に眼球を回転させて、視線を一定方向に保つ反射のことです。


例えばですが、頭部を左回旋させると、眼球は右側に回旋します。この時、左の半規管からの求心性インパルスが増加して、前庭神経核ニューロンを興奮させます。そこからの神経伝達により、右の外側直筋と左の内側直筋を支配する運動ニューロンが興奮して、これらの眼球運動が生じます。




じゃあ、それぞれをどうやって臨床に使ったらいいの?って話です。




大前提として!


まず、目眩症状が眼球由来の方にはやらないでください。

特に進行性核上性麻痺(PSP)の方にやろうものなら、えげつないくらいきついめまいが生じるので。



あとは、パーキンソン病の方などすでに姿勢反射障害が生じており、ヤール段階が重度の方には不向きです。やるなら初期段階ですね。




じゃあ、適応と運動療法の提供方法は?



適応はこちら!

・整形外科疾患や内部疾患のみ(またはこれらの複合疾患)、脳血管系由来以外の認知症系統、廃用系統の患者さんにならリスクが少ない状態で実施可能です。


運動方法は?


これはあくまでも一案です。

僕の臨床上、やりやすさと効果判定しやすいものですが、文献的にどうのこうのって言われているものではありません。



立った状態、またはフロントランジの姿勢のままミニコーンを置いて頂点をタッチする。レベルアップさせるなら、フロントランジ→タッチの応用。


こちらの運動は、つまづき予防や反射的に転倒防止のための足を素早く出す練習になります(訓練ってあまり言いたくないので、僕の表記は練習としてます。訓練という言い方に慣れている方は訓練だと思ってOKです)。


これをやると何がいいって、まず以下の反応が取れます。


・頸部伸展による重心バランス調整

・前方変移した重心を後方へ戻す効果あり

・応用編では、踏み出した足を戻すので股関節のパワーも使えるようになる

・練習を積み重ねると、自身で床に落ちているものを拾いやすくなる

・つまづいても転倒しにくくなる

・ステップを出しやすくなるので、結果的に歩行速度の向上も見られる場合がある




他にもありますが、臨床上多く見られる所見に対してだとこんな感じです。




視点を一転集中させて、頸部回旋のみさせる。(端座位→立位→つかまり立ち)



これは前庭動眼反射を意図的に生み出す練習ですね。

語り始めるとキリがないので、サクッとお伝えしますが、そもそも僕らの身体機能というのは無意識領域の動きです。


意図的にやる運動は、生活評価的にいうと、できるものであり、しているものではありません。


箸を持つことはできるけど、病棟生活では箸を使わない。これと一緒です。




とはいえ、意図的にやらないと脳への学習が進まないので、まずはリハビリテーションの中で意図的にさせることが大切です。




どこでもいいです。

視点を集中させるポイントとしていいものは、カラーリングされていてそのカラーが目立つ原色がいいですね。パステルカラーだと目立たないので、場合によっては他の色の補色が入り、刺激が弱い可能性があるので。



慣れてきたら、タイトルにも書きましたように少しずつ難易度を上げてみましょう。



この前庭動眼反射、意外と難しいですよ?

ぜひご自身でやってみてください。





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