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執筆者の写真リハビリスクエア【リハスク】

TKAope後のROM制限にどう関わるか

安齋です!

今回は質問をシェアします。そのまま、質問を抜粋しますね!


質問 ・可動域の制限に対しては麻酔下での受動術しかないのかなと思いますが、TKA後重度の可動域に対して何かアプローチし、改善した例はあるでしょうか? またそこまで制限強くなってしまった理由は術後腫脹強くなかなか引かなかったことや、農家の仕事柄長時間同一肢位でいたこと、術前の制限も強かったため膝周囲の組織はかなり柔軟性低下していたことなど考えていますが、他に考えられることはどんなことがあるでしょうか?
・伸展最終域での軋轢音ですが、TKA施行しているので軟骨や滑膜による音ではないと思い、膝蓋下脂肪体が原因なのかと思っていますが、どうでしょうか?私自身TKA後で軋轢音があった患者さんは今まで経験がなく… また、膝蓋下脂肪体だとしてもそこまで癒着する原因となるメカニカルストレスがどうかかってしまったのか悩んでいるところです。ちなみに術中角度は120°近くまで屈曲できていたようです。膝伸展時に下腿の外旋を誘導しながらだと少し軋轢音軽減したので、膝窩筋や内外ハムストリングスのバランスの影響なども考えてみようと考えてみようと思います。


ということでした!


なるほどなるほど。確かにこれは悩みますよね。


さて、皆さんはどのように考えますか?

改善できる?できない?

膝蓋下脂肪体(IFP)が原因となる?ならない?




【TKAについて】



そもそも、TKAとは全人工膝関節置換術(Total Knee Arthroplasty:TKA)のことで、膝OAや関節リウマチによって変形した膝を金属やセラミック、ポリエチレンなどに入れ替え、膝のアライメントを整えて痛みや可動域制限を改善するというものです。

切開する方法はいくつかあり、内側から切る方法と外側から切る方法があります。


・medial parapatellar approach ・midline approach ・midvastus approach ・subvastus approach ・lateral approach


うち、lateral approachのみが外側からのopeで他は内側よりopeします。

最も一般的な方法とされるのが、medial parapatellar approachとされ、内側から切る最も展開が容易な方法だとされています。


・内側広筋の筋腱移行部で切開 ・大腿四頭筋の内側1/3を縦割

膝蓋骨の内側で大腿四頭筋腱と内側広筋を引き剥がすように切開。 下方へ進み、膝蓋骨内側、膝蓋腱内側、内側の膝蓋下脂肪体を切開。 膝蓋骨を内側から反転させ、外側膝蓋大腿靭帯を切離し、膝関節をあらわにする。

これであらわになった膝関節を人工のものに入れ替えます。

この方法によって切っている組織は以下の通りです。



・大腿遠位内側、下腿近位内側の皮膚 ・大腿四頭筋腱 ・内側広筋 ・膝蓋下脂肪体 ・外側膝蓋大腿靭帯


当然、切っている組織は手術による影響を強く受けるため、筋肉なら筋出力の低下、皮膚なら関節運動に伴う可動性低下を起こします。 痛みはどの組織でも起こしうる可能性があります。


切った組織の影響は当然考慮してリハビリを進める必要があるということです。


【膝関節の屈曲運動】


大腿骨と脛骨、膝蓋骨より構成される膝関節。

滑り転がり運動を理解するとその病態もすぐに理解できるものになります。

詳しくはこちらの記事へ。


膝関節について



さてさて、どう考察しますか?


【質問回答】


前置きが長くなりましたが、いよいよ回答です!

・可動域の制限に対しては麻酔下での受動術しかないのかなと思いますが、TKA後重度の可動域に対して何かアプローチし、改善した例はあるでしょうか?またそこまで制限強くなってしまった理由は術後腫脹強くなかなか引かなかったことや、農家の仕事柄長時間同一肢位でいたこと、術前の制限も強かったため膝周囲の組織はかなり柔軟性低下していたことなど考えていますが、他に考えられることはどんなことがあるでしょうか?

→術後にも関わらずROM制限が強い症例の改善例はないですね。改善しても角度が多少変わる程度です(〜10°ほど)。術中角度が気になるところではありますが仰る通り、受動術しかないかなと思いますし、術前の制限が影響しているのは間違い無いです。術前の生活歴を考慮すると、大腿骨と脛骨の骨幹部の湾曲も生じているために骨の円滑な動きが出ないことも制限の1つになります。また、術後の経過として患部の出血量が多いとその分、組織の浸透圧の問題で軟部組織の滑走性低下から始まり、伸張性低下につながることもあります。ですが、私もいただいた情報内での考察は軟部組織の伸張性低下が一番の原因と考えます。振り子運動で疼痛が生じているので軟部組織かなと思います。


・伸展最終域での軋轢音ですが、TKA施行しているので軟骨や滑膜による音ではないと思い、膝蓋下脂肪体が原因なのかと思っていますが、どうでしょうか? また、膝蓋下脂肪体だとしてもそこまで癒着する原因となるメカニカルストレスがどうかかってしまったのか悩んでいるところです。

→膝蓋下脂肪体が原因で伸展制限になることはありますが、轢音の原因にはなりにくいです。これは結果的に批判になってしまうのですが、opeがあまりうまくいって無いケースかと思います。どこの靱帯を残しているかや術式にもよりますが、TKAで異常音がある場合はTKAの一部分の衝突だったり摩擦音が原因だったりします。滑車機能がTKAでうまく動作が作れていないと音の原因になったりします。 大腿骨の動きも評価してみてください。TKAで外旋誘導で軽減するということは、関節のずれはないはずなのでおそらく大腿骨と脛骨の回旋軸が整っていない可能性があります。

すでに円背傾向ですので、大腿骨頭の前方変移していると思います。となると、骨盤の動きに合わせた骨頭のローテーションと後方滑りが出てないです。

股関節の屈曲の際の角度とリズムの連動を評価してみてください。

屈曲90°までが大腿骨の単体の転がり運動、そこから先の角度が骨頭の後方滑りをしながら屈曲になります。その際、寛骨の後傾が出てくるかどうかです。

あとは、静的立位の評価で骨盤の前傾がある場合は重心を後方に他動でシフトさせた際に寛骨が後傾するかどうかを見ていただけるといいですね!



このような回答になっております!


【膝OAの概念】


膝OAは患者さんには申し訳ないのですが、疼痛は付き物です。

出ない方もいらっしゃいますが、いづれ出てきます。

膝OAで疼痛に悩むのはやめましょう。むしろ、進行性疾患である以上完治は不可能です。擬似的完治としてTKAがあります。医療先進国のアメリカやヨーロッパではTKAはガンガン進めています。彼らはopeを早期にして自分らしく生活できることを目標にしているのです。

元々健康リテラシーが強いのでその辺りもやはり日本人とは違いますね。

かくいう安齋も早期opeは賛成です。その方が術後も疼痛が生じにくいしmobilityも改善しているケースを何例も見ています。逆に重度OAの方のTKA置換はあまり予後が良い例を見たことがないです。


【まとめ】

・最も一般的な方法とされるのが、medial parapatellar approachとされ、内側から切る最も展開が容易な方法

・膝OAの疼痛に悩むのはやめましょ

・術前の変形が強い場合はope後も制限が強く残るので早期opeがgood


です。膝OAのTKA術後に悩む方の1つのアドバイスになれば幸いです!



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