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【慢性疼痛の評価鑑別方法 stage-1st】

執筆者の写真: リハビリスクエア【リハスク】リハビリスクエア【リハスク】



リハビリを進める上で痛みは大きな問題点の1つであり、痛みをとること自体がゴールとなることも少なくありません。



痛みは、侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、侵害可塑性疼痛の3つに分けられ、特に組織の治癒過程を過ぎても痛みが残存し、3ヶ月以上続く疼痛を慢性痛と呼びます。

慢性痛は上記の3つの内、侵害可塑性疼痛に含まれ、いわゆる心理的な痛みと言われるものはここに分類されることがあります。


ですが、「慢性痛ってどうやって評価したらいいの?」と思う方も少なくないはず。

実際、僕も以前は心理的な問題だから…と片付けていましたが、しっかり評価することで改善できるものもあります。

今回は慢性痛に焦点を当て、その評価方法を中心に解説します!




慢性痛以外の鑑別は大前提




ここでは慢性痛の評価について解説しますが、その前に侵害受容性疼痛や神経障害性疼痛の可能性を除外することが大前提です。


痛みが3ヶ月以上持続しているから慢性痛だ!と決めつけるのではなく、筋骨格系や神経系の問題がある方、あるいは心理的問題にそれらが混在しているケースも当然います。



最低でも以下に挙げた項目は評価した上で、慢性痛の評価を進めましょう。


・医師の診察

・画像所見

・神経的所見

・Pain DETECT(神経障害性疼痛の評価スケール、今回は割愛)

・整形外科テスト

・ROM

・MMT

・腱反射




慢性痛に対する評価スケール



ここでは以下の評価スケールについて解説します。

・CSI(中枢性感作症候群:CSS の評価)

・PCS(破局的思考の評価)

・TSK(運動恐怖の評価)

・HADS(抑うつ、不安の評価)


CSI(Central Sensitization Inventory)

慢性痛の病態には中枢性感作(CS)の関与が考えられており、中枢性感作症候群(CSS)と捉える流れがあり、CSIが評価に用いられます。

慢性痛にCSが関わっているだろうとは言われていますが、はっきりとしたメカニズムは未だ解明されてはいないようです。


CSとは、中枢神経の過興奮による神経生理学的な状態を示し、中枢神経系において痛覚過敏を誘発する神経信号の拡大と定義されています(参考文献①)。


CSに対する包括的なスクリーニングツールとしてCentral Sensitization Inventory(CSI)がテストの高い信頼性と内的整合性が報告されています(参考文献②)。

田中らは、原版と同じ内容を有し、言語的に妥当な翻訳がされた日本語版のCSIを作成しており、既に妥当性と信頼性も確認されています(参考文献③、④、⑤)。





CSIの内容としては、CSSに共通する健康関連の25問で構成されるpartA(0~100点)、CSSに特徴的な疾患の診断歴の有無を問うpartBから構成されます。



臨床的には以下のような重症度に分けられます。

subclinical:0~29点

mild:30~39点

moderate:40~49点

severe:50~59点

extreme:60~100点


アプローチとしては、認知行動療法や運動療法による下行性疼痛抑制系の賦活、Exercise-induced hypoalgesia(EIH)が有効とされています。





PCS(Pain Catastrophizing Scale)


PCSとは、痛みの破局化を点数化する疼痛破局的思考尺度と言われる質問紙です。

これは1995年にSullivanらによって発表され(参考文献⑥)、2007年には松岡らによって日本語版が作成されています(参考文献⑦)。




PCSは疼痛に対する破局化を13項目からなる質問紙で評価するもので、52点満点で高値になるほど破局化傾向が強いことを示します。

カットオフ値は特に設定されていないようです。


破局化とは、痛みの経験を過度に否定的に捉える傾向のことで、痛みを感じた際に極端な、恐ろしい結果になると予測する感情的な考え方です。


破局化は以下の3つの下位尺度からなります。

反芻:痛みに関連した考えに過剰に注意を向けること無力感:痛みの強い状況への対処において無力なものへ目を向けること拡大視:痛みの脅威を過大評価すること


点数自体も重要ですが、下位尺度の内どの点数が特に高い傾向にあるのかを把握し、それぞれに対する対応が重要とされています。


ざっくりと言うと、反芻に対しては痛みを考えないように、無力感に対しては自信を持つように、拡大視に対しては怖がらないようにという感じです。

言葉で言うのは簡単ですが、実際は中々難しいと思います。




これも認知行動療法や運動療法が有効とされています。小さなゴールを設定して少しずつ達成していってもらったり、本人と一緒に動きながら、このくらいの動きなら痛みなく動けると認識してもらったりすることが大切です。




参考文献

1.Ellen A Schur et al : Feeling Bad in More Ways than One: Comorbidity Patterns of Medically Unexplained and Psychiatric Conditions. J Gen Intern Med. 2007;22(6):818-821.

2.Tom G Mayer et al : The development and psychometric validation of the central sensitization inventory. Pain Pract. 2012;12(4):276-85.

3.田中 克宜 他:日本語版Central Sensitization Inventory(CSI)の開発:言語的妥当性を担保した翻訳版の完成 日本運動器疼痛学会誌 2017;9:34-39.

4.Tomohiko Nishigami et al : Development and psychometric properties of short form of central sensitization inventory in participants with musculoskeletal pain: A cross-sectional study. PLoS One. 2018;13(7):e0200152.

5.Katsuyoshi Tanaka et al : Validation of the Japanese version of the Central Sensitization Inventory in patients with musculoskeletal disorders. PLoS One. 2017;12(12):e0188719.

6.Sullivan MJL et al : The Pain Catastrophizing Scale : development and validation. Psychol Assess 7:524-532,1995.

7.松岡 紘史 他 : 痛みの認知面の評価 Pain Catastrophizing Scale 日本語版の作成と信頼性および妥当性の検討. 心身医 47:95-102,2007.


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