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知っておきたい認知行動療法の基礎


中嶋です。


以前挙げていた認知行動療法の記事を手直ししました。


基礎的な内容だけでも知っておくと臨床応用できますので、ぜひ確認してみて下さい



【認知行動療法とは?】

行動科学と認知科学を臨床の諸問題へ応用したものと定義されています(一般社団法人 日本認知・行動療法学会より)。


ある事象が起きたとき、それによって感情や行動が生じます。例えば嫌なことがあった時(嫌な感情が生じたとき)、生じた事象(不快に感じる出来事)に問題意識を持ちやすいですが、実際には事象と感情・行動の間には「認知」が介在しており、この認知によって感情や行動は影響を受けると考えられています。



認知行動療法では、この「認知」の捉え方部分にアプローチする手法となります




近年行動医学や行動変容という言葉は予防医学やリハビリ場面においても重要視されています。


認知行動療法は、この行動変容を捉える上で重要となる考え方になります。




【認知の歪みとは?】


認知の歪み、いわゆる偏った考え方の「クセ」のことです。

認知行動療法では、対象者の考え方のクセをこちら側がまず理解して、最終的には対象者自身がそのクセを修正できるようアプローチをしていく必要があります。


まずは人が陥りやすい認知の歪みをきたしてしまう考え方を知る必要があります。


認知の歪みはたくさんありますが、今回は3点挙げていますので確認してみましょう





これを見ると、認知の歪みは誰にでも生じやすそうですよね。



では、認知の歪みはどのように変えていくのでしょうか?



以下が手順になります。


①考え方のクセ(自分の認知のクセ)に気づく


②新しい思考の探索


③日常生活においてのセルフモニタリング


④自己効力感の向上








認知の歪みが問題なのは、"非合理的な感情や行動"を生み出してしまう事にあります。




どういうことか、少し慢性腰痛を例にして説明していきます。



二分割思考が強く、いわゆる「痛いor痛くないか」でしか判断できない人の場合、「痛みがすぐにゼロにならないなら、このリハビリは意味がない。やらない方がマシ」と考えてしまうかもしれません。




この場合、最終的に問題となるのは、二分割思考というその人の認知の歪みではなく、認知の歪みによって、続けていれば良くなるかもしれないリハビリ(運動)を続けられない、という「行動」に問題が出てしまうところにあります。




認知というのは、いわばその人自身の物事の捉え方なので、個人差があってしかるべきなんですよね。 ただ、何の裏付けや根拠もない物事の捉え方によって、悪い方向へ行動が生じてしまう事が問題なわけですね。



逆に言うと、この認知の歪みを変える事が出来れば行動自体も変わる可能性がある。 すなわち、今回のテーマである「行動変容」に繋がるという事になります。





【健康行動ステージモデル】


「行動変容モデル」と呼ばれたりもしますが、ジェイムス・プロチャスカが「トランスセオリティカル・モデル」として提唱したものです。





無関心期→関心期→準備期→実行期→維持期



人が行動する時にこの五つのステージを通るという考えですね。






各ステージには、それぞれに沿ったアプローチが求められると言われています。



私は、リハビリで自主トレを提案する時、このステージモデルについてよく考えます。


例えば、何回伝えても自主トレが定着しない人ってたくさんいます



それは、こちら側の伝え方や自主トレの提案方法が間違っているのか?



勿論その場合もあるのかもしれませんが、このステージモデルを見ると、もしかしたらその対象者は、まだ無関心期のレベルにいるのかもしれません。



無関心期の人に、こちらが必要だと思う事をひたすら提案しても、やはり次のステージには行けない(行動変容は生じない)です。


つまり無関心期の人には、自主トレの方法ではなく、「自主トレをする事によって得られる利益や、自主トレを続けていく事の必要性」などを説明する時間を十分に割く必要があるかもしれない、と考えることができます。




ただ、以前肥満患者に対して認知行動療法を実践している医師から「無関心期の人に働きかけるのは、労力の無駄だから、無理に追わず、関心期になってからアプローチを始める」という話を聞きました。




リハビリだと、全くの無関心期の人はそこまで居ないと思いますが、各ステージに対応したアプローチを意識する事で、自主トレが定着したり、行動変容が目に見えて生じた人もいましたので、実践してみると面白いかもしれません







【行動目標設定】


対象者がどのステージにいるのか(無関心期なのか、関心期なのか、準備期なのか)を把握出来たら、次は行動目標の設定を行います。



行動目標というのは、最終的な目標を達成するために必要な第一歩(最初の目標)という認識で良いかと思います。




ここでわかりやすく、慢性の非特異性腰痛を例に挙げてみましょう。




慢性的な腰痛に悩んでいるAさん



この腰痛を評価した時に、筋バランスの問題、姿勢の不良アライメントに加え、生活背景として運動不足、睡眠の質低下、仕事時の環境(デスクワークする際の机が低いなど)、ストレスなども腰痛に関与していると評価したとします(とてもざっくりしてますが。。)



この時、睡眠の質を高めることや仕事の時の姿勢・環境面を変える事は、本人にとって「変えたい」ことであってもすぐには「出来ないこと」 である可能性が高いです。




そうすると、いくら良い睡眠に繋がる方法の提案や仕事場の環境調整を提案したところで、何も変わらない可能性が高くなってしまいます。



この時に大事なポイントは本人が「変えたい」かつ「出来そう」と思っている事を最初の行動目標として設定することになります。




よく腰痛改善に良いとされる"運動"や体操を指導する事もあるかと思いますが、仮にその体操が腰痛に効果があるというエビデンスが得られていても、本人にとって「出来ない」ことかもしれない、という事は常に頭に入れておかなければなりません。




ここでいう「出来ない」というのは、その運動が難しくて出来ない、という意味だけではなく、忙しくて出来ない、運動をするタイミングがない、という生活背景上から「出来ない」というケースも含まれます。



こちらが良かれと思って指導した運動を全く家でしてくれない、というケースは療法士なら誰もが経験していると思います。



この時、「あの患者さん、ちゃんと自主トレしないから良くならないんだよ」で片付けてしまってはダメで、そもそもこちらが提案した運動が対象者の生活スケジュールを考えた時に、本人にとって「出来そう」だったのかを、振り返る必要があります。



では、最初の第一歩として、何を行動目標にすればよいのか?


Aさんの例で言うと、例えば運動不足の解消という部分に着目します。




運動不足解消は腰痛改善に繋がるため、Aさんにとって「変えたいこと」になります。そして運動不足解消のために「駅で階段を使う」という行動目標を提案してみます。



「駅で階段を使う」ことがAさんにとって「出来そう」な事として共有出来れば、まずこれを行動目標に立てて、次のセルフモニタリングに移ります。



セルフモニタリングでは、「駅で階段を使う」 という設定した目標行動を継続させるために行います。




方法としては、階段を使った日にチェックが出来る記録表を渡すなど、客観的な振り返りができれば何でも良いと思います。




そして、セルフモニタリングが定着してきたら、一度行動目標の達成状況を確認します。


あくまで行動目標の達成状況確認なので、腰痛がなくなっているかどうかを評価するのではありません。



ついつい、私たちは腰痛をすぐに無くしてあげたくなってしまいますが、それは最終ゴールなので、まずは"効果"ではなく、設定した最初の第一歩(行動目標)の達成状況に焦点を当てます。




「駅で階段を使う」事が定着し、前より運動が出来ている感覚を、本人が持てていれば、次の行動目標を立てます。



次の行動目標を立てる時も手順は同じで、今の時点で「変えたい」かつ「出来そう」なことを選択します。



こうやって繰り返していくことで、最終的な腰痛の改善に繋げていきます。












今回は、あくまで認知行動療法の視点からのアプローチ例なので、当然全てはこの限りではないですが、実際のところ非特異性の腰痛に対しては認知行動療法の効果を示す研究は増えてますよね。




色々な症例で使える考え方なので、今回挙げたストラテジーや行動目標設定などは、個人的には臨床で重要視しています



認知行動療法は一つの確立したアプローチなので、簡単に実践は出来ませんが、要素を知っておく事は大事だと思います^ ^




自主トレが続かない人。


痛みに敏感な人。


精神的な疾患を抱えている人。




基礎を押さえておくだけでも色々な患者さんに対応出来るスキルだと個人的には思います

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