リハスク運営の安齋です。
臨床で肩関節疾患を対応するのはいつになっても、奥が深いというかやればやるほど肩ってやること多いし医学的根拠も変わるから、下手なこと言えないよなぁと実感しています。
そんな最近、反転型人工肩関節(以下、RSA)の対応をする機会に出会いました。
これで臨床経験は3回目です。
なかなか無いんですよね。
日本でもRSAが導入されてようやく10年目。
まだまだ臨床実績もないし、なんなら先進国において導入がもっとも遅いのが日本です。
当然ながら、日本の文献は少ないです。海外の論文も多少はありますが、まだまだ研究者たちが携わっているという結果が見えてきません。
アクセプトの問題もあるでしょうけど、シンプルな部分としてやはり症例数の問題がボトルネックだと思われます。
そんなRSA。
なにが困るって、プロトコルがほぼ見つからんことです。
非常に大変でした、、、プロトコルがないから複数の文献や研究結果を洗いざらい見てはまとめて、肩関節の軟部組織などの組織機能を考慮しながらどのくらいのタイミングで~なんて考えておりました。
10の文献や参考書をもとに肩関節の機能をしっかりと復習して足りない要素はなにか?と思考を繰り返した結果、ある仮説とオリジナルのプロトコルが完成しました。
これが正しいとは言えませんが、一つの指標になるかと思われます。
口酸っぱく言いますが、EBMを提唱できないのであくまでも仮説であることと汎用性は低いということをご了承ください。
では、本題に入ります。
《そもそもRSAの適応基準は?》
なお手術の適応は「原則70歳以上」、「他の筋肉には問題ないが腱板断裂によって肩の構造が破綻し肩の挙上が不能な状態」、「レントゲン上、関節に変形が認められる状態」という3つの条件が基準となります。RSAは腱板断裂に対する最終手段です。
要は、できる場所が限られているのとそんなにホイホイとしてもいいようなものという認識ではないということです。重症度も高いですし。
《術後の自動可動域》
引用:リバース型人工肩関節置換術と解剖学的人工肩関節置換術患者の術後早期の疼 痛について
術後の ROM は,術後 7 日目の他動屈曲角度は,RSA 群で 76.0±15.1̊,TSA 群で 88.2±11.2、他動外旋角度は、RSA群で-1.3±6.8、TSA群で21.8±12.2。。術後 14 日目の他動屈曲角度は,RSA 群で 87.9±10.1̊, TSA 群で 98.6±14.5̊,他動外旋角度は RSA 群で 3.3±6.2̊,TSA 群で 26.4±15.3̊ であった。
このことからいえることは、このデータでは術後7日目の段階で他動屈曲角度は70°程度なら動かしても可能だということ。外旋に関しては、-2°が安全圏だということです。ただし、海外文献では、術後早期の積極的可動域拡大のリハビリは脱臼リスクの増悪に関与するという結果も出ている。従うべきは、執刀医が定めた術中角度がヒントになるでしょう。
1) 手術適応 A)良い適応 ・腱板断裂性関節症(濱田 X 線分類 Grade 4,5)
・腱板広範囲断裂(濱田 X 線分類 Grade 2,3) のうち自動挙上が 90 度以下に制限され ているもの
【腱板断裂性関節症】
・ 肩関節正面単純X線写真にて濱田分類 Grade 4,5(骨頭上昇に加え関節窩にも関節症 性変化が及ぶ典型的腱板断裂性関節症)で,かつ自動挙上が 90 度以下に制限されてい る活動性のあまり高くない高齢者は最も相応しい適応.
【腱板広範囲断裂】
・ 下記の条件すべてを満たす症例 1) 90 度以下の挙上制限を認め,2) 保存的治療に抵抗し,3) 濱田 X 線分類 Grade 2, 3 で,4) MRI 検査にて棘上筋および棘下筋に Goutallier 分類で stage 3以上の所見 を認める,5) 活動性のあまり高くない高齢者.
B)適応を検討しても良い症例 ・ 腱板手術によっても腱板機能の回復困難が予想される症例.腱板機能が障害されたリウ マチ肩,人工肩関節全置換術後の再置換術,化膿性肩関節炎後関節症,関節窩の骨欠損 が大きい一次性変形性肩関節症,高齢者の陳旧性肩関節脱臼,上腕骨近位端周辺に発生 した悪性腫瘍など.
【腱板断裂性関節症または腱板広範囲断裂】
・ 上記 A)にて,必ずしも自動挙上が 90 度以下に制限されていなくても機能障害が著し い場合.
【腱板広範囲断裂術後再断裂例】
・ 一次修復が不能で機能障害の著しい場合.
・ 複数回手術後にも関わらず機能障害が著しい場合で, 65 歳未満で判断に迷う場合は日 本肩関節学会リバース運用委員会に相談することができる
【実際の臨床は?】
ここまで読むと、おおよその全体像は把握できるかと思います。
問題は実際の臨床でどう対応したらいいのか、です。
ぶっちゃけたところ、実例がそこまで表に出ていないのでなんとも言えないのが事実です。
そこで!
私が担当した3例をベースに具体例をお伝えします。
先に言いますが、この例が答えではありません。
私自身も何が正解かは全くわからず、術式とDr.からのサマリーに忠実になりつつ、こちらからの注文を通すべくDr.に確認をとったりした結果からお伝えできる結果論です。
・プロトコルはデータベースを元に、Dr.からのサマリーに忠実になりましょ
当たり前の話ですが、表に出ている実例が少ない以上、何に注意すべきかはope担当したDr.の意見をベースにするのが必須です。
ROMをするにあたり、プロトコルはどの程度を目安にしているのか。
これを注意してリハビリをしていきます。
初期段階では、屈曲角度は90までを意識して介入します。
90までなら、上腕骨が後方滑りによる脱臼リスクがない上にGHjtへの負担も少ないのでまずはここを目指します。
90°まででしたら、胸鎖関節だけで済みますし(90°以上になると肩鎖関節が関与してくるので脱臼リスクがさらに増悪します)。
回旋運動は基本的に避けます。狙っても1stの回旋と3rdをとるだけくらいです。
2ndは禁忌になります。
細かい説明は割愛しますが、2ndはGhjtにおいて脱臼リスクの高いポジションとなります。
肩関節は後方の方が軟部組織が多いのですが、前面は少ないので。
これは肩関節としての関節周囲組織の分布を見るとわかるかと思います。
(関節周囲組織の分布について知りたい方がいましたら、LINE公式にてご連絡ください)
やるべきことは、屈曲角度の改善と1st回旋角度の改善、上腕二頭筋、三角筋のMSEです。
この辺りを意識してやっていきます。
最初は患者さん側が屈曲の感覚があまりないので、あげようとすると肩の挙上が入ります。序盤のROMは完全passive、60°まで屈曲できるようになったらassistiveに屈曲の運動療法を入れます。
その際、重いものではなく軽いもので良いので球体を持たせて行うと良いです。
上肢を一つとして使うことを再学習しないといけないため、ただ屈曲するのではなく常に何かを持った状態で運動療法を入れることが重要です。
ゴルフボールでも良いですし、テニスボールでもOKです。
重錘とか持たせようとしてしまうとかえってトリックモーションを大きくしてしまいますし、ope部位に対して過負荷になるので避けましょう。
ちなみにですが、この球体を持ってもらう理由がもう一つあります。
それがディープフロントアームライン(=DFAL)です。
小胸筋から上腕二頭筋、回内筋及び回外筋、最後の母指球筋のラインですが、ここが整うと上肢としての機能が上がります。
ものを持ったり支えたりしやすくなります。
立ち上がりや床上動作で非常に有効的です。
1stでの回旋もpassiveから徐々にassistiveにするのが重要です。
RSAのリハビリは一見、データがないので不安を感じるでしょうけど肩関節としての本来の機能を考慮すると自ずとやれることと回避した方がいいことがはっきりしていきます。
肩関節の基本構造と基礎機能を思い出してみるといいかもしれません。
(需要があれば、肩関節を網羅した基礎解剖学と基礎運動学の資料を作ります)
最後にRSAにおいて僕がリサーチした文献から紐解いたプロトコル全貌をデータでお渡しします。
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